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遺族支援とは

身近な人、大切な人を亡くされた方々は、
どのような支援を求めておられるのでしょうか?
私たちは、何ができるのでしょうか?

ひと言で表すことのできる簡単な答えはありません。
それぞれの方が、それぞれの状況におられますから、ひとくくりにすることは到底出来ません。目の前にいる方が、何を必要としておられるのか、私たちは何ができるのか、このふたつの問いかけを続けること、それが支援の第一歩ではないでしょうか。

そのままを受けとめる

深い悲しみや衝撃のさなかにある方のそばにいることは容易くはありません。
大切なことは、その時々の気持ちや状況をそのまま聴かせていただき、受けとめ、寄り添うこと、そして対処すべき手続きなどがあれば一緒に考えていくことでしょうか。
それぞれのペースを大切に、先取りしたりせずに、結果として遺族が「支えられたと実感できること」が大切です。

そのままを受けとめる

慟哭、怒り、混乱、繰り返す感情、それぞれのペースがある

耳を傾ける

評価しない、説得しない、教えないことが肝心

見守る、寄り添う
共に考える、探す、行動する

生活上の困難への対処を支援する
情報を提供する
適切な機関につなげる

周囲が先取りして助言などをすることによって、かえって遺族の気持ちを傷つけてしまうことがありますから、上記の順序はとても大切です。

様々な反応・影響への基本理解

遺族支援に関わる際には、喪失体験によって引き起こされる葛藤・苦悩、それによる様々な影響への基本理解は欠かせない要素です。

グリーフの4つの側面

  • 悲しみ、絶望感、孤独感、不安、混乱、怒り、後悔、罪悪感、安堵感等の様々な感情
  • その人が亡くなったことを理解し、信じようとする思考プロセス
  • 不眠、頭痛、食欲不振、動悸、疲労感、持病の悪化などの身体的反応
  • 人生の意味や、人知を超えた存在への問いかけなどの人生観、死生観

グリーフの基本理解

  • グリーフは、喪失に対する人間としての自然な反応である
  • 自然な反応として「よい悲しみ方」「正しい悲しみ方」も、「悪い悲しみ方」「間違った悲しみ方」もない
  • 死因・亡くなった人との関係・年齢・性格・生活環境・成育歴などさまざまな要素が関係する
  • 悲嘆の表し方、強さ、期間、それぞれのペースがある
  • 固有のもので、比べようがない
  • 故人が記憶にある限り、グリーフに終わりはない

参考:大切な人を亡くした生徒を支えるために 2012年 ダギー・センター
(日本語版NPO法人全国自死遺族総合支援センター)

遺族支援4つの側面

遺族支援4つの側面

生活の安定なしにこころのサポートは機能しきれません。また、精神的な支えが得られたと実感できると、生活上の諸問題への対処に向かう力が増してくるでしょう。不眠、食欲不振など身体への影響も見逃せません。
具体的な情報の提供が役立つことや、家事・雑事の代行が支えになることもありますから、必要に応じて総合的な視野で、個別的、具体的な支援がなされることが大切です。

すべての側面に対応できる人はいません。
だからこそ、“わたしにできる”ことは
きっとあるはずです。

遺族にかかわるつながり

遺族にかかわるつながり

それぞれの方がもともと持っておられる人間関係、家族や友人、知人など身近な方たちの存在は欠かせません。医療、法律、経済などの専門家の力が必要なこともありますし、専門職間の連携も欠かせません。しかしながら、身近な関係であるからこそかえって理解し合えないことも起きますし、専門職にできないこともあります。注目されているのが、思いを共有できる者同士、とくに同じような体験をした人同士、または隣人として、仲間として、同じ方向をめざして生きている人たちとの支え合いで「ピアサポート」と呼ばれる遺族のつどい~わかちあいの会~が各地で開かれています。

グリーフの変容の可能性

様々な苦悩や葛藤を経て、人生の再構築をはかる道のりは喪の作業~グリーフワークと言われます。生活面の困難が解決に向かい、理解し合える仲間や安心して感情を表すことの出来る場の提供等支援活動が有用な時期でもあります。グリーフワークの道のりを経てグリーフは変化する可能性があります。 以下はグリーフの変容の可能性を示したものです。

感情面 感情が揺れることがあっても、安定した状態に戻ることができる
大きな苦痛を伴わずに故人を思い出し、偲ぶことができる
身体面 健康の維持や回復に前向きになる
他者の健康にも気を配るようになる
行動面 新しい人間関係の構築を目指す
停止していた活動を再開したり、新しい活動に取り組む
結果を見直すことができる
思考面 社会とのつながりを再認識し、自分にできることを模索する
未来についてのビジョンを持つこともある

「過去」に起きたこと、その事実はだれも変えることはできません。けれども「今」と「未来」の生活や考え方とそれに伴う気持ちは変わることもあり得る、変えることができる、私たちはそう信じています

亡くなった人がかけがえのない存在であったからこその悲嘆は、避けることのできないものであり、その苦しみの肩代わりは誰にもできません。けれども苦しい道のりをたった独りで歩むのではなく、傍らに寄り添う人がいるのであれば、その先に歩む人生は異なったものになるでしょう。遺族支援とは、喪の作業の伴走者のような役割かもしれません。

遺された人たちの「痛み・傷み」が消えることはなくとも、少しずつやわらぎ、笑いや希望をとり戻すことがあることを信じ、それぞれの方がその人らしい生き方を組立て直す足がかりを築くこと、そしてそこに寄り添っていくことを大切にしたいと思います。

悲しみの向こうに