身近な人、大切な人、かけがえのない人を亡くすことは、おそらく人生でもっとも苦しい出来事でしょう。遺された人には、年齢や性別を問わず、いろいろな感情が起こり、こころや体、思考や行動にも、また、人生観、価値観などにも影響があります。
喪失体験によって引き起こされる内面の葛藤・苦悩~グリーフ(Grief 悲嘆)~
- 悲しみ、絶望感、孤独感、不安、混乱、怒り、後悔、罪悪感、安堵感等の感情
- その人が亡くなったことを理解し、信じようとする思考プロセス
- 不眠、頭痛、食欲不振、動悸、疲労感、持病の悪化などの身体的反応
- 人生の意味や、人知を超えた存在への問いかけなどの人生観、死生観
参考:大切な人を亡くした生徒を支えるために 2012年 ダギー・センター
(日本語版NPO法人全国自死遺族総合支援センター)
グリーフは、喪失に対する人間としての自然な反応で、死因・亡くなった人との関係・年齢・性格・生活環境・成育歴などさまざまな要素が関係します。
また、遺された人には衝撃のさ中にあっても、すぐにしなければならない諸手続き、日々の生活や故人の遺した諸課題への対処があり、家族・親族・職場その他の人間関係の変化に苦しむことも多くあります。
亡くなった直後は、「感情がマヒしたようで涙も出なかった」、「現実と受けとめられなかった」、「少し時間が経ってからの方がいろいろな思いがわいてきて辛かった」と多くの方が語られます。もうそろそろ落ち着いてきただろうと周囲が思う頃が、遺された人にとってはもっとも苦しい時期であることは多く、「この気持ちは経験しなければわからない……」多くの遺された人に湧いてくる率直な思いです。
残念ながら死別の悲しみや痛みを消してくれる魔法や特効薬は、どこにもありません。
また、過去に起きたことを変えることも出来ません…。
逆説的ですが、その時々の思いを語り、わかち合い、十分に涙を流し、必要な時には助けを求めることが、死別後の人生を歩む力が生まれるために大切であることを、私たちはそれぞれの体験を経て、また多くの身近な人、大切な人を亡くした方との関わりで学んできました。ただ、辛い感情は様々な理由により言葉にしにくく封印しがちで、孤立感はさらに深くなり、心身のバランスを崩すことがあるほどです。
たんなる沈黙ではない
秘密の哀しみなど存在しない
語られることのない哀しみは、
もっと耐えがたい重荷となる
昨今ようやく、遺された人を支える活動が各地で行われるようになってきました。十分ではないかもしれませんが、悲嘆に寄り添い、課題の対処のお手伝いをしようという流れが進みつつあります。
悲しみや後悔などの気持ちが消えることはなくとも、わかり合える人たちとの関りを通して生き続ける意味や生きがいを見出し、その人らしい死別後の人生の再構築は可能であると、私たちは長年の活動を通して信じ、支え合いの輪が一層広まり充実することを願っております。