「オンライン自死遺族わかち合い」実施のためのガイドライン

『オンライン自死遺族わかち合い』実施のための
ガイドライン ver. 0

本ガイドライン ver. 0は、「『オンライン自死遺族わかち合い』実施のためのガイドライン」作成に向けた、情報共有と収集、そして更なる検討のための叩き台です。

「オンラインわかち合い」を開催する際には、オンラインの特質をよく理解し、トラブルが起きないよう充分に注意して準備することが大切です。また、想定されるさまざまな課題および主催者側の対応や責任範囲を参加者に明示し、あらかじめ十分に理解を得ることも重要です。

以下に、現時点で予想される「オンラインわかち合い」の主な利点と課題を挙げました。後者に関しては、考えられる対処例も提示しました。これらは、実際に「オンラインわかち合い」を経験された方々が感じておられるものと、重なるところも異なるところもあるかもしれません。ぜひ、それぞれの経験と工夫をフィードバックとして、下記までお寄せいただくようお願いいたします。

送付先

NPO法人全国自死遺族総合支援センター
〒102-0073千代田区九段北4-1-31 吉田ビル405室

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「オンラインわかち合い」のより安全な実施・普及により、遺族が安心してわかち合いに参加できる機会が拡充し、自死遺族支援がいっそう広がることを願っております。

1.「オンライン自死遺族わかち合い」の予想される主な利点

(1) 参加機会

  1. 自宅など日常の空間から参加できるようになる。
  2. 地域を超えた参加が可能になる。
  3. オンラインのコミュニケーションに親和的な人が参加しやすくなる。

オンラインにより、わかち合いへの参加の機会が広がることが予想されます。

  1. 自宅など参加者が日常を過ごしている空間から参加できるようになるため、自身や周囲の病気や障がい、体調不良、育児、介護その他で外出が困難な場合にも参加が可能になります。また、身支度や移動にエネルギーや費用を使わずに済むことで、参加に当たっての精神的、身体的、その他の負担が減り、参加しやすくなる人もいるでしょう。
  2. 住んでいる地域を超えたわかち合いへの参加が可能になり、近くに対面のわかち合い開催がない地域に住んでいる人も参加できるようになります。
  3. オンラインのコミュニケーションに親和的な人が増えていますが、そうした人が参加しやすくなる可能性があります。

(2) 時間、費用

  1. 往復の時間や費用の軽減になり得る。
  2. 開催経費の削減になり得る。

主催者、参加者ともにオンライン機器や通信環境を用意する必要がありますが、一方で時間や費用などの負担を軽減することが可能になります。

  1. スタッフや参加者の往復の時間や費用の軽減になり得ます。 
  2. 会場費その他の開催経費の削減にもなり得ます。

2. 「オンライン自死遺族わかち合い」の予想される主な課題

(1) セキュリティ、個人情報

  1. 参加を許可されていない第三者が、オンラインミーティングルームに不正に侵入してくる危険がある。
  2. 参加者は、他の参加者に気づかれずに画面を撮影、録画、録音できる。
  3. 参加者の周囲に、参加を許可されていない第三者がいて、会話を聞いている可能性がある。
  4. 会に関心を持つ人が遺族を装って参加する可能性が高まる。

安心して参加できるように、参加者の安全、特に個人情報が守られることは、対面でのわかち合いと同様、オンラインのわかち合いでも非常に重要です。

  1. インターネット上にミーティングのURLを公開しない、待合室を設定して主催者が許可しないとミーティングルームに入室できないようにする、などの対策が考えられます。その際、参加者のオンラインミーティングツール上の表示名が、申し込み時の名前と異なることがあるので、注意が必要です。入室許可制にせず、わかち合い開始時間の前に入室を求め、全員を確認してからわかち合いを始めて、それ以降はミーティングルームをロックするなどの方法もあります。オンラインミーティングツールそれぞれにセキュリティ対策の機能があるので、事前に調べて安全な方法を準備しましょう。また、各ツールは随時、セキュリティ対策をアップデートしているので、主催者が使用するツールをつねに最新のものにしておくことも重要です。
  2. まずは、守秘や撮影、録画、録音に関するルールの設定と明記徹底が必要になります。そのうえで、それでもそうしたことが起き得る可能性と、主催者としての防止策、起きた場合の対応を充分に検討して、参加者に事前に明示するなどが考えられます。
  3. ②と同様、ルールの設定と明記徹底が必要になります。ただし、さまざまな事情により、一人になれる空間を確保するのが難しい参加者がいることは、意識しておきましょう。どうしても一人になれない参加者の場合、ヘッドセットやマイク付きイヤホンを使用することで、他の参加者の音声が周囲の第三者に聞こえないようにするなどの工夫が考えられます。
  4. ②の録音同様、遺族を装った参加は、従来の対面のわかち合いでも可能性はありました。しかし、偽装参加の心理的ハードルは高く、問題になることは少なかったかもしれません。一方、オンラインではそうした心理的ハードルが下がり、偽装参加の可能性が高まることが考えられます。

(2) ファシリテーション

  1. ルールをどのように共有するか?
  2. 参加者の顔を表示するかどうか?
  3. 発言の順番や意思表示をどうするか?
  4. 雑談の時間をどうするか?
  5. 小グループを使う?
  6. チャットを使う?
  7. 画面共有を使う?
  8. トラブルが起きた場合や、体調を崩して急に離脱した人がいた場合に、どうするか?

オンラインのわかち合いでは、対面のわかち合いとはまた違ったファシリテーションの工夫が必要になります。事前に主催者のあいだで話し合い、準備しておくと同時に、参加者の声を聞き、それぞれの団体の方針や実情に合わせたオンラインわかち合いのスタイルをつくっていくことが望まれます。

  1. トラブル防止のためには、充分なルールの説明と共有が必要です。なかには、聴覚情報より視覚情報のほうが理解しやすい人もいるため、音声による説明だけでなく、画面共有機能を使ってテキストを表示しながら説明することも、一つの方法として考えられます。
  2. 参加者の映像をオンにし、顔を表示するかどうかは、オンラインでのわかち合いを開催するに当たり、考慮しなければならない問いの一つです。顔が見えるほうが安心と感じる人も、逆に顔を見せるのは不安という人もいます。自分のいる環境を画面に映したくない人もいますし、ヴァーチャル背景を使いたくても、オンラインミーティングツールや通信機器によってできないこともあります。
  3. 発言の順番や意思表示をどうするかに関しては、オンライン特有の問題があります。進行役も含め、参加者一人ひとりに表示されている画面が必ずしも同じではないため、画面の並びに沿って発言するといった方法ではうまくいかないことがあります。発言の意思表示に関しては、画面上で手を挙げる、各ミーティングツールの「手を挙げる」機能を使うなどの方法が考えられます。「手を挙げる」機能に慣れていない人もいるため、わかち合いのはじめにどのような方法を使うか周知し、必要に応じて練習するとよいかもしれません。また発言者の話に聞き入っている時など、対面のわかち合いに比べて進行役が参加者の挙手に気づきにくいことがあります。
  4. 対面のわかち合いでは、茶菓休憩時間などに近い人と雑談することで心がほぐれ、全体のわかち合いでの発言や継続参加の動機になることもあります。オンラインでは、対面と同じように雑談することは難しく、そのことにストレスを感じる人もいます。雑談の時間を設けるかどうか、設けるならどのようなかたちにするか、それぞれのわかち合いの実情に合わせつつ、考え工夫しましょう。
  5. オンラインミーティングツールには、小グループに分ける機能が用意されていることがあります。そうした機能を使う場合は、主催者のあいだで事前にグループ分けや各グループの進行について相談し、参加者にとって安全な運営を心掛けましょう。
  6. 各オンラインミーティングツールには、チャット機能が備わっています。設定によっては、参加者が全体にメッセージを送るだけでなく、主催者や他の参加者に個別にメッセージを送ることも可能になります。主催者や他の参加者が知らないところで、特定の参加者のあいだでやりとりが交わされるといったことも起こり得ます。トラブルを避けるには、チャット機能をどのように設定し、使用するか、あらかじめ検討し、決めておくのも一つの方法です。
  7. 各オンラインミーティングツールには、画面共有機能が用意されています。それぞれのわかち合いの実情やスタイルに合わせ、必要であれば活用しましょう。
  8. さまざまな点に注意を払い、安全な運営のための工夫を凝らしても、トラブルが起きることや、参加者が体調を崩して急に離脱することはあり得ます。そうした場合にどのように対処するか、主催者のあいだであらかじめ検討しておくと同時に、必要に応じて柔軟に対応することが望まれます。

(3) 参加環境

  1. 参加者が自分でわかち合いに参加する環境を準備しなくてはならない。
  2. 通信のオン・オフで、日常の時間・空間とわかち合いが直接、接続される。
  3. 周囲の音が伝わることがある。
  4. 周囲の空間が画面に映し出される。

オンラインでは参加者は、自宅など日常を過ごしている空間からわかち合いに参加することになります。1で述べたように、そのことには利点もありますが、一方で課題も生み出します。

  1. 対面でのわかち合いとは異なり、オンラインでは、参加者一人ひとりが自分で、わかち合いに参加するための環境を準備しなくてはなりません。しかし、さまざまな事情により、一人になれる安全で静かな環境を確保するのが難しい人や、安定した通信環境のない人、携帯電話会社等との契約により通信量に制限のある人、通信機器の操作に慣れていない人などがいます。
  2. 日常の時間・空間とわかち合いが直接、接続されることをどのように感じるかは、人によってさまざまです。対面でのわかち合いでは、開催場所への往き帰りの時間が、気持ちの準備やクールダウンの時間として機能してくれることがあります。そうした時間がなくなって、通信のオン・オフのみでわかち合いが始まり、終わることに戸惑う参加者もいるでしょう。一方で、1の「予想される主な利点」で述べたように、身支度や移動にエネルギーや費用を使わず、ふだんいる空間からわかち合いに参加できることを楽だと感じる人もいます。また、外出できないけれど、自宅からなら参加できるという人もいます。さまざまな感じ方や事情の参加者がいることを念頭に置きつつ、必要であれば、導入やクールダウンの時間を工夫しましょう。
  3. 使用するマイクによっては、生活音など周囲の音がそのまま他の参加者に伝わることがあります。PCやスマートフォンの内臓マイクではなく、ヘッドセットやマイク付きイヤホンなどを使うと周囲の音を拾いにくくなります。また、発言者以外をミュートにすることで、雑音を軽減できます。
  4. 映像をオンにした場合、周囲の空間が画面に映し出されますが、そのことをどう感じるかは人によってさまざまです。ヴァーチャル背景を使えば生活空間が見えてしまうことはなくなりますが、(2)-②で書いた通り、オンラインミーティングツールや通信機器によってできないこともあります。

(4) 設定、通信環境、通信量など

  1. 設定や通信環境によって、映像や音声のトラブルが起きることがある。
  2. データ通信量が大きい。
  3. バッテリー消費量が大きい。
  4. オンラインミーティングツールには、それぞれに参加可能人数の上限や、無料版での時間制限など特徴がある。

通信機器の設定や通信環境、通信量など、オンラインならではの課題もあります。

  1. 映像や音声が届かない、乱れる、途切れるなどのトラブルは、スピーカーやマイクなど使用機器の接続や設定が適切でない場合、または、通信環境が安定していない場合に、多く起こります。また、エコーやハウリングは、同じ空間で複数の機器を使用してオンラインミーティングに参加している場合や、マイクの接続や設定などによって、生じることがあります。
  2. オンラインミーティングは、データ通信量が大きく、参加者の通信機器(PC、スマートフォン等)の通信量契約内容や使用状況によっては、通信機器の日常使用に支障が起きることがあります。
  3. オンラインミーティングは、通信機器のバッテリーも消費します。わかち合いがある程度以上の時間にわたる場合は、電源への接続が推奨されます。
  4. 現在、さまざまなオンラインミーティングツールが普及していますが、それぞれに参加可能人数の上限や、無料版での時間制限など特徴があります。また、どのツールも随時、機能がアップデートされています。よく調べて、それぞれのわかち合いに適したツールを選びましょう。

①~③に対しては、事前に主催者と参加者が、設定や操作方法、通信環境を確認するために短時間の個別オンラインミーティングを実施するなどの対応が考えられます。事前個別ミーティングでは、映像やマイクのオン・オフ方法やボリュームコントロールの方法、データ通信量契約状況、声が聞こえない時にやりとりするための通信手段(電話やメール、チャットなど)を確認しておくとよいかもしれません。インターネットで「オンラインミーティング 通信環境 音声障害」「オンラインミーティング データ通信量」などの用語で検索すると詳しい情報が得られます。

以上

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